藤岡さんから、2006年の4
通目のお手紙が届きました。
藤岡さんの「5月の想い出」と近況報告です。
今回は、携帯電話のスナップ写真です。拡大写真はありませんので御容赦願います。
皆様のご感想のメールもお待ちしています。

皆さんこんにちは!!

この時期になると夏の香りがするのがたまらなく好きです。
夢をあきらめてた学生時代、5月は夏よりも夏を感じてわくわくしてたものです。

今回は5月の思い出です。

1990年5月のゴールデンウィーク、
27歳で生まれて初めて外国へ飛び立った。

「プラハの春」音楽祭の期間中に4年に一度だけ開催される国際指揮者コンクールに出場するためだ。

生まれて初めての外国

生まれて初めてのコンクール

生まれて初めてのプロオーケストラ



僕にとって何もかもが初めてで、それでも緊張よりワクワクしながら、生まれて初めて国際線の飛行機に乗った。

コンクールは2週間近くかけて行われる大きなコンクールで、審査員もクーベリックやノイマンといった名指揮者達。優勝者にはいろいろな契約が待っていた。

僕は一次審査を通過した時点で、生まれて初めて自信をつけたのをよく覚えてる。

絶好調の僕は二次審査も通過、最終ラウンドの4人(中国人、ブルガリア人、とイタリア人だったと思う)のファイナリストの一人に選ばれた。

僕は絶対優勝すると誓っていた。

日本では僕の師匠の渡邊暁雄先生が病院のベッドの上で闘病を続けながら僕の結果を楽しみにしていたのだ。
僕は先生の内弟子となってから5年間、寝食をともにするようにして勉強していた。
僕を弟子として以上に、まるで息子のように可愛がってくださった渡邊先生の喜ぶ顔をどうしても見たかったのだ。


ファイナルラウンドはオーケストラも放送響から名門チェコフィルに代わり課題曲もドヴォルザークにマーラーと大曲だ。

超満員のコンサートホールにテレビカメラ。

僕は自信満々だった・・・。

しかし、結果は「優勝者無し」で僕はただの入賞だった・・。


どんな顔をして先生に報告したらいいかわからないまま空港から病院に直行した。

病室に入ると渡邊先生はベッドの上でニコニコしながら、

「サッチーノ!(先生は僕をそう呼んでいらした)
 優勝しなくて本当に良かったよ!
 僕はね、キミが優勝しないように神様にお祈りしてたんだよ。
 今優勝したら天狗になるだろ。まだまだ早いよ。」

先生は本当に僕のことをよく理解していたのだ。

病院を出た瞬間・・

その年初めて
夏の香りがした・・・

大好きな夏の香りを感じながら
デヴューできるまで
大好きな夏を忘れることを心に決めた。

6月
僕を息子のように可愛がってくださった先生が他界した。

生まれて初めて号泣した。

9月
イギリスに留学

「まだまだ早いよ」

この言葉の意味をいやというほど思いしらされる。

でもそのおかげで、デヴューできるまでの3年間無我夢中で勉強できた。


この時期、夏の香りがすると必ず思い出す大切な思い出です。



 


一昨日は梅田芸術劇場で念願の平日昼間のコンサートのシリーズの第一回目。

チケット発売が一ヶ月前と遅かったのに満席で最高の雰囲気でした。
西濱君(本職は関西フィルの事務局長)のトークも絶好調!沢山のお客様本当にありがとうございました!

関西フィルの新しいお客様が生まれた手応えを感じるコンサートで嬉しかった!来年は回数を増やせそうです。

今のクラシック界は日本全体で(東京だけで考えてはダメだ)考えればまだまだ裾野が狭い。裾野が広がれば、優秀なプレーヤーもさらに増え、プログラミングも思い切ったことができるし、オーケストラもさらに発展する。その広がりが文化として定着すれば企業や国もサポートを惜しまなくなるだろう。

携帯電話のカメラでパチリ!

幸い、関西フィルはお客さまに恵まれてコンサートも満席が多いが、すべての面で今以上を目指し、これからももっともっと新しいクラシックファンを増やしていくつもりだ!

大阪では老舗の本格派「シンフォニー・ホール」、あらゆる意味でゴージャスな、「いずみホール」 重要文化財で本当にヨーロッパにいると錯覚してしまう歴史ある「中之島公会堂」、そして梅田の街中にあって沢山の人たちを巻き込んでしまう親近感のある「梅田芸術劇場」(馬蹄型2000席なのに席がステージとすごく近く音響がいい!)と、全く違った4つのホールで、関西フィルはそれぞれのキャラクターにあったシリーズを展開していくことになります。


5月はいろんな思いに駈られるけど、関西フィルと関西という土地で、とこととん付き合って充実した仕事ができることを本当に幸せに思ってます。


それでは皆さんコンサートでお会いしましょう!!

2006年5月19日



 

PS1 6月は本当は一ヶ月休暇をとろうと思って仕事入れてなかったけど、今まで日程が合わなくて共演できなかった三つの学生オケを振る。今、日替わりで千葉大、慶応大、京都大の学生達と付き合ってる。
僕の口癖の、「エブリバディ青春してるかい!」「エブリバディ熱く生きようぜ!」に最初は学生達もひき気味だったけど、今では楽しくやってます。(それにたまに学生オケを振ると、プロオケは勝手にやってくれちゃうところも具体的に指導しなきゃならないからすごく勉強になる。)
6月は学生達と僕は弾けるのでお楽しみに!!(慶応ワグネルの日程のアップが遅れてますが、6月25日(日)「横浜みなとみらい」です)。

PS2 以前から振りたくてしょうがなかったシベリウスの7番を京大オケでやっと振れる。最高のシンフォニー!! 

PS3 関西フィルと初CDのシベリウスの2番(ライブ録音)が近々に発売されます。シベリウスの交響曲全曲を関西フィルとCD化するつもりです。次は来年に1番を録音する予定。

PS4 今ベストセラーの「国家の品格」が面白かった。僕が海外にいて感じたことと全く同じことをさらに深く掘り込んだ内容だった。日本は本当に素晴らしい国です。
 


※本ページの写真は藤岡さんのプライベート写真です。
 
無断転用はお断り致します。


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