藤岡さんから、2006年の3
通目のお手紙が届きました。
近況のご報告とムソルグスキー(ラヴェル編)の「展覧会の絵」についてです。
今回はお写真がありません。よって、過去に何度か掲載していますが、「指揮姿」2枚をお届けします(拡大写真にはなりません)。お許し下さいませ。
皆様のご感想のメールもお待ちしています。


皆さんこんにちは。

今日から大阪にいます。

まず今月4日は読響さんと1年ぶりの共演。
前半のショスタコーヴィッチの室内交響曲とシンフォニア・ダ・レクィエム。 以前からこの2曲(両方レクィエム)を並べてプログラミングしてみたかった。 ショスタコーヴィッチは諦めで終わってしまうので、ブリテンの最後で救われる。このコンビネーションはイケルと実感。また取り上げたい。

後半のベートーヴェンのトリプル協奏曲は指揮するのは初めて。

ソロの藤原さん、毛利さん、若林さんと最初のソリスト合わせから本番がすごく楽しみだった。
とにかくベートーヴェンが一点の曇りもなくこんなに楽しんで書いた曲というのはめずらしいと思う。
名曲だと実感。あまり演奏されないのはソリストが3人でお金がかかる(?)からだけだと思う。

読響はいつも明るい雰囲気で、僕は余計なことを考えずに音楽だけを考えていられる素敵なオーケストラだ。
ソリスト、オーケストラの皆さん素敵な時間をありがとうございました!

関東の皆さん、次回の東京は9月に日フィルと芸劇です。
お楽しみに!
さて、来週は大阪と姫路でコンサート。

「みどりの日」は久しぶりにムソルグスキー(ラヴェル編)の「展覧会の絵」を振る。(ムソルグスキーのピアノ曲をラヴェルがオーケストラに編曲した一般的なバージョン)

デヴューしたての頃はよく取り上げたけど、しばらく振らずにいた曲だ。

この曲は、一般的に、ムソルグスキーが親友のハルトマンの絵を描いた曲なんてイメージがあるけど、実は作曲者の内面性が非常に強いシリアスな曲だ。

ただ、あまりにもラヴェルの編曲が色彩豊かで、この曲の本質を見失いやすい。僕がしばらく取り上げなかった理由もピアノソロのオリジナル版の方が好きになってしまったからだ。

でも関西フィルと仕事するようになって、もう一度突っ込んだ音創りをしたくなったので今回取り上げることにした。
ムソルグスキーはこの曲を作曲するまで一般的な評価はあまり高くなかった(ムソルグスキーの死後、ラヴェルがこの曲を編曲して有名になった)。 酒飲みで友達も少なく、唯一の親友が画家ハルトマンだった。

彼が死んで、彼の遺作展を見に行ったことが彼にとって大きな転機となる。親友の遺した絵を通して、彼の悲しみ、苦しみ、怒り、希望etc・・・が深く表現されている。(現存する絵は少ない)。

たとえば一枚目の絵「グノーム」は可愛らしい絵だが、冒頭フォルティッシモで強烈に始まる。それはまるで親友の死の衝撃と僕は感じる。

2曲目「古い城」には親友を失った寂しさがあると感じるのは僕だけだろうか?

また4曲目の「ビドロ」は最近では従来言われていた「牛車」ではなく「虐げられた人々」という意味という説が強い。

どちらにしろ当時の民衆の苦悩が強烈に感じられる。

8曲目「カタコンブ」(地下墓地の絵。そこにはガルトマン自身の姿が見られる)。
にはムソルグスキー自身自筆譜に
「今は亡きガルトマンの芸術精神が私を導いている。やがて骸骨は静かに輝き始める」
という書き込みがある。

続く最後のプロムナード(冒頭から絵と絵の間に何度も同じ旋律が登場する)には「死者とともに」というタイトルがつけられる。

死者(ハルトマン)と共有する創造精神は作曲者によると「青い炎」が浮かび上がる。そこは、この曲で一番優しい響きがする、僕の大好きなところだ。

そして「バーバ・ヤーガの小屋」は怒りであり想像精神の噴火!そこから「キエフの大門」=芸術の勝利へとなだれこむのだ。

このムソルグスキーの精神性が何処まで表現できるかが今回のコンサートにかかってる。

前半のソリストの須川さんもオーケストラに参加します。

前半のラフマニノフの「死の島」も絵画から誘発された最高傑作。
暗い闇の中の海のうねりは、色彩豊かにクライマックスへと向かいます。

長生淳さんの新作で須川さん率いるトルヴェール・クワルテットの新作も楽しみ!

色彩豊かな「みどりの日」になりそうです。
満席で補助席、立ち見がでそうです。
 

30日は大好きな姫路(桜今年も見にいけなかった!)でサンサーンスの3番「オルガン付」。クラシック初心者には絶対お勧めの交響曲だ。

今までに何度も関西フィルと取り上げてる曲。
さらに奥行きのある演奏を目指します!

両日ともお楽しみに!

それでは皆さんコンサートでお会いしましょう!!

2006年4月27日





 
 

PS1 僕がまだヨーロッパに行く前に僕の師匠、故渡邊暁雄先生がこの「展覧会の絵」をレッスンしてくださった。最初のレッスンで「プロムナードだけ振ってごらん。」と一言。
振り終わった僕に
「サッチーノ、キミは全然この曲わかってないよ。」と一言。
絵の合間で演奏される各プロムナード(同じ旋律が使われてる)をどう振るか見るだけで、この曲の理解度がわかるのだ。

PS2 ボクシングの亀田兄弟。最初は懐疑的な目で見てたけど、お兄ちゃんの試合を見て感動。お兄ちゃんのボクシングはまさに正統派で素晴らしいと思った。普段いかに厳しい訓練をしてるか伝わってきた。
奇をてらわず、久しぶりにボクシングが美しく見えた。

PS3 新庄が引退??? 続けて欲しい。

PS4 以前から振りたくてしょうがなかったシベリウスの7番をやっと振れる!スコアを読み始めて、改めてこの曲の虜になる。最高です。

PS5 5月17日は、関西フィルとのはじめての、平日昼間のコンサート。梅田の芸術劇場で「ボレロ」他、華麗なる管弦楽名曲集。もちろんトーク付き!5月18日は梅田のJEUGIA梅田ハービスENT店でトークショーします。質問コーナーなどもするつもり。こちらもお楽しみに

PS6 姫路のパルナソスホールはパイプオルガンのある素敵なホールです! サンサーンスの3番はこのパイプオルガンとオーケストラの華麗な響宴!初心者の方に是非聴いて欲しい。姫路駅からホールに向かう途中の姫路城の姿が美しくて大好き。
 

※本ページの写真は藤岡さんのプライベート写真です。
 
無断転用はお断り致します。


〜藤岡幸夫さんを応援するWEBの会より〜
すでに届いたファンの皆さんのメールをご紹介しています。是非ご覧下さい!
そして、あなたも是非メール下さいね!


[ HOME ] [ PROFILE ] [ CONCERT SCHEDULE ] [ DISCOGRAPHY ] [ LETTERS ] [ ABOUT THIS SITE ]
[ FROM MANCHESTER ]