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藤岡さま先日は、真摯なお返事をいただき、ありがとうございました。
 藤岡さんの言われるとおり、どちらも正しいのだと思います。
 私がまがりなりにも演奏会に通うようになったのは、ここ5年ほどのことです。その以前は、「急に残業が入っていけなくなるかもしれないし、CDに較べて値段は高いし、何度も聴けないし、隣に嫌な人が来るかもしれないし他いろいろ・・」と考えて、CDばかりを聴いていました。生演奏が殆どのお仕事の藤岡さんには、これを奇妙に思われることでしょう。
 いろいろなクラシックの演奏会に通うきっかけはCDの入手が殆ど不可能なオペラ歌手を聴きたかったことでした。
 そこで生演奏のおもしろさと素晴らしさを知りました。まさに麻薬のような。
 驚いたのは、楽器本来のもつ音量が、想像していたのと違っていたこと。CDでは勝手に調節できていたので、こんなに小さい(あるいは大きい)音だったのが、とても新鮮だったのです。
 それに、ホールごとに全く違う音楽の響き。
 最後に、「お金返せ」と思うものから、聴衆と演奏者が共有できる感動を巻き起こす演奏があるということ。
 今では、チケット購入を決めた時から始まるワクワクドキドキほど楽しいものはないと思っています。
 その時間を与えてくれる藤岡さんを始めとする演奏家の方や吉松さんのような作曲家の方に、とても感謝しています。思えば生演奏を聴けるというのは、とても希有なことなんですよね。数十年生きている時が違ったら聴けないのですから。
 
 藤岡さんのお返事を読んでいて、ずっと忘れていたことを思い出しました。自分の生演奏初体験もやはりトークつき演奏会(山本直純&新日フィル&原信夫&シャープスアンドフラッツ)だったことを。もう曲も覚えていませんが、とても楽しかったことだけは覚えています。
 クラシックの厳しい現況は、お返事を考えていた間にも次々と耳に入ってきました。何とかしなければ決まりきった曲しか聴くことができなくなるという現実が急に迫ってきたような気がして慌てました。
 聴衆の一人である私にできることは演奏会に通うこと位ですが、友人と誘い合わせて通いたいと思っています。
 まだ藤岡さんの指揮される吉松作品を生で聴いたことはありませんが、あのどこか懐かしい涙が出るほど美しい曲を生で聴ける機会を逃さないよう(その瞬間を考えると、もうそれだけでワクワクします)、また素晴らしい演奏家と曲を素通りしてしまわないよう五感の全てをしっかり開いておくことを心がけたいと思います。
 最後に。お返事の最後にお心づかいいただき、ありがとうございました。
 
 
 
 1999年12月12日 雪村 澪
 
 
 
 
   雪村 澪さま
 
 いつもレターありがとうございます。
 2000年の5月にサントリーホールで、又、
 4月に大阪で吉松作品を指揮します。
 是非来て下さいね。
 
 
 
 
 藤岡幸夫
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