「辻久子の70年 伝え続ける音楽の力・熱き夢」


2004年9月20日 ルミエールホール(大阪府門真市)
指揮/藤岡幸夫
ヴァイオリン/辻久子(チャイコフスキー), 神崎悠実(モーツァルト)
管弦楽/関西フィルハーモニー管弦楽団 (コンサートマスター: 川島秀夫)
ナレーター/朝倉洋 (大阪国際大学短期大学教授(元関西フィルホルン奏者))

グリンカ/「ルスランとリュドミラ」序曲
モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲 第1番
ビゼー/「アルルの女」第2組曲 (パストラル, 間奏曲, メヌエット, ファランドール)
チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲
  サラサーテ/ツィゴイネルワイゼン

今回の藤岡さん&関西フィルは脇役が多いのと、司会がいつもと違って大真面目(おいおいおい)だったのでなかなか書きにくいのですが(^_^;)。
「朝比奈さんと初めてお会いしたのは、私が六、七歳の頃です。朝日会館で毎年開かれていた関西の音楽家が集っての演奏会でした。私がソロでバイオリンを弾いて、お客さんの大喝采をいただいて、その後、ロビーで朝比奈さんがキャンディを買ってくれたのを覚えています。」(「大阪人」2002年4月号 "追想−朝比奈隆")
「音楽家としてデビューされて間もないころの朝比奈さんを知っているのは、もう私くらいになってしまいましたね。」(同上)
「日ソ間、そして日米間が緊迫の度を増しつつある中で、四一年秋の満州楽壇の話題をさらっていたのは"天才少女ヴァイオリニスト"辻久子の来演であった。(中略) 辻を満州に招いたのは、甘粕正彦である。歓迎パーティの席で甘粕が、ヴァイオリンを披露した久子に祝儀のポチ袋を渡そうとしたところ、恐いもの知らずの久子は『そんなもん、いりません』とはねつけてしまった。周囲はどうなることかと固唾を飲んだが、甘粕は何もいわずにそれを引っ込め、以来この一五歳のプライド高き少女をいっそうひいきにしたという。」(岩野裕一「王道楽土の交響楽」)
1番目はその通りなら昭和7〜9年(1932〜34年)の頃の話ということになります(ちなみにキャンディは当時相当な高級品であったと思われます)。2番目は朝比奈さんの公式デビューを意味するなら昭和15年(1940年)のことです。最後の「四一年」とは昭和16年です。これだけで畏れ入ってしまいます。今回のコンサートについて辻さんの意気込みはこちら

藤岡さんと4日前には園田高弘さんと協演して、さらに一公演はさんで辻さんですから、独奏に日本の音楽会の重鎮が続きます。終演後「長い一週間だった」という感想を洩らす団員の方の声が聞こえてきたり。

ホールの開場後ウェルカム・コンサートがあり…私は3曲目の終わりしか聴いていませんが、多分弦楽四重奏だったと思います。関西フィルの西濱事務局長によると演奏されたのは以下の通り。
モーツァルト/ディヴェルティメント K.136 第1楽章
ボロディン/だったん人の踊り
アルベニス/タンゴ

まず、最初から好調に「ルスランとリュドミラ」、朝倉さんの短い話の後が爽快かつイタリアンあふれる?モーツァルトでソリストに合った曲。楽章ごとに拍手が出ていました。それに対して軽く会釈で応える高校1年生の神崎さん。藤岡さんの過去の発言をご存じのファンはにやりとしたでしょう。ステージマナーがまだまだぎこちないところが初々しい。ここで朝倉さんと神崎さんのトークがあり、神崎さんからこの曲は周囲の薦めや経験があってまた「さわやかな曲なので」選んだとのこと。他に何を聴いてもらいたいかに関しては「えーと…えーと……」しばし考えて「(客席が)一緒に曲の中に入っていける演奏を心がけたい」、どんな演奏家になりたいかはぱっとはっきり「個性的な演奏家」という答でした。朝倉氏は神崎さんを、試合(演奏)の凄まじさと普段のかわいらしさは卓球の愛ちゃんみたい、といった感じで評していました。次に朝倉さんは藤岡さんにインタビュー。藤岡さんは関西への思い入れを語りますが、みなさんご存じの、自身は江戸っ子ながらお母様と夫人が関西人であることと年間通すと関西にいる時間が一番長い、といった趣旨。今回藤岡さんの発言はこれだけでした。「アルルの女」も好調、間奏曲が終わったところで、出かかった拍手で2回少し振り向いて笑う藤岡さんに客席から微妙な笑いが少し。今回は初心者の聴衆が多かったですが、うまく転がしています。今回藤岡さんがとった笑いらしきものはこれだけです。後半2曲はフルート沼田さんの八面六臂の大活躍で終了。
後半も最初に朝倉さんが短い話をしてから演奏開始。藤岡さんが何度も顔を横に向けつつ慎重に辻さんに合わせての演奏がはじまります。最初はいくぶん朦朧とした独奏ながら、途中のカデンツァが年輪を重ねないと出そうにない味わい深い響き。この辺から独奏も管弦楽も好調にエンジンが回転しはじめ、第1楽章が終わるとかなり大きな拍手。以降進んでゆくにつれ辻さんから飛んでくるオーラは光を増しつつ哀愁と威風を交えつつ終了。拍手の中花束贈呈があり…辻さんへの贈呈は神崎さんです。そのあと慎重に慎重にチューニングをした辻さんがマイクなしで会場に話しかけます「いつもはピアノとしてますが、オーケストラでは珍しい」ツィゴイネルワイゼン。こうなると完全に辻さんの独壇場でコンサートは終了。辻さんは舞台に呼び出されるたびに、必ずオーケストラの方を向いて謝意を表していました。
以上です。

                   2004年9月20日 Fu(ふ)
     






いつも本当にありがとうございます。
辻先生は本当に独自の世界を持っていらっしゃって、
僕も共演するのを楽しみにしています。
この時代の演奏者の方のプロ根性というのは、本当に
凄いですよ。
また次回の共演を楽しみにしていて下さい。




藤岡幸夫

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